皇海山/庚申山/鋸山 2013/6/1 深Qの日本百名山登頂シリーズ【Vol.33】 クラシックルートで皇海山を踏破する
皇海山(すかいざん)2,144m/庚申山1,892m/鋸山1,998m 単純高低差1,294m
前日まで、丹沢山塊の大倉ピストンと二者択一で悩んでおりましたが結果、天候の良さで深Q百名山新規GETシリーズで、「皇海山」登頂計画を遂行していくことに決断していきます。
皇海山の「スカイ」は元々「コウガイ」と呼ばれ、宛字が変形したとも言われています。足尾山塊の中央に突出して聳え立つ山容は、山深さに囲まれて原始的な景観が大変魅力的です。
さて、今回の皇海山登頂に当たり一般的登山ルートには、①群馬の沼田側から悪路を片道20キロダート走行して、車のタイヤを摩耗させながら運転に体力と気力を消耗する展開から登山を遂行する。
②栃木の足尾側から入山して、ロングな林道・登山道を歩き、脚部を摩耗させながら肉体的破壊活動を味わった展開の登山を遂行する。2ルートの選択肢があり、深Qと同じルート取りの②足尾側から入山することにしました。
②のルートでは、登頂に至るまでの縦走ポイントに奇岩怪石地帯、背丈ぐらいの薮漕ぎ、更に妙義山に匹敵するような高度感たっぷりの鎖場・梯子登攀地帯まで現れます。
その後、目的の登頂を果たしてから疲弊状態に陥り、下山ルートでは一般登山道にも拘わらず、極めつき1級品レベルの大変ロングな薮漕ぎを強いられていきます。薮で隠された足元には、倒木のトラップが多く隠されており、俺はスーパーマリオか?と思わされるくらい難儀で肉体的ダメージをジワジワと喰らっていきます。
更に1級品の薮漕ぎに次いで、山腹トラバース地獄では、登山道の崩壊箇所、沢の高巻き、狭い登山道と劣悪な環境に驚きます。まだ丹沢の階段地獄の方がよっぽど単純明快で受け入れやすい拷問ではありますが、非常にタフでロングなイベントで歓迎されたこの下山ルートは、目印の判りづらさも関連して、コースロストを2回も発生させてメンタル的ダメージも加わり、自己登山史上、最上級レベルに達する拷問登山となりました。
脚部粉砕型、脚部玉砕型を凌ぐ、脚部崩壊型の超拷問ルートでの帰還です。
※画像は、庚申山展望地より眺めた「皇海山」の山容
レポ作成の原動力になりますので、下記1発ランクアップのため、宜しくお願いします。
【ルート】:銀山平駐車場(4:20)⇒天狗の投石(5:01)⇒一の鳥居(5:15)⇒猿田彦神社跡(6:15)⇒庚申山荘(6:22-6:27)⇒胎内くぐり(6:59)⇒庚申山(7:24-7:39)⇒駒掛山(7:49)⇒薬師岳(8:42)⇒鋸山(9:34-9:42)⇒不動沢のコル(10:13)⇒皇海山(10:56-11:17)⇒不動沢のコル(11:47-12:00)⇒鋸山(12:32-12:46)⇒六林班峠(13:42)⇒見晴らし分岐(15:56)⇒庚申山荘(16:04-16:14)⇒一の鳥居(17:00)⇒銀山平駐車場(18:00)
総歩行距離:28.5㎞、行程タイム:13h40m(休憩・コースロスト含)
AM1時30分自宅から国道17号線に入り、熊谷~太田~桐生~みどりとひたすら一般道を走りぬけていきます。やがて足尾地域にある銀山平に到着し、空を見上げると「ギャオ~ン!」と吠えたくなる気分になっていきます。
本日はロングコースの為、長時間山行を覚悟しており、ヘッデン装着からのスタートを考えておりました。が、しかし登山開始時刻には4時20分となっており、周囲は既に明るくなっています。
まずは一の鳥居目指して、ゲートから長い林道歩きとなります。
林道の内、舗装道路は四分の一程度、残りはダートな道を歩いていきます。
天狗の投石では、石が綺麗に投げ込まれたように整理されて見えます。
やがて4㎞の道程の林道を歩き抜いて、一の鳥居に到達します。先行者のマウンテンバイクが置かれており、ダートな道を効率良く走行してきたものと思われます。
一の鳥居から庚申山荘まで2.3㎞の距離があります。ここから本格的な山道となります。まずは勾配の緩い沢沿いを歩いていきます。
そのまま登り込んでいくと、滑稽な形をした岩が現れます。夫婦蛙岩(めおとかえるいわ)の表示があり、家庭円満を尊ふ・・・パワースポット?ですか。
仁王門(他にもイベントあり)の前で立ち止まり、背後より単独の健脚ハイカーが現れたので先に通過させていきます。
先を進むと「旧猿田彦神社跡」に突き当たります。ここに江戸時代、庚申講として隆盛を見た本山があり、昭和21年に焼失してしまい、現在の猿田彦神社は銀山平公園の傍らにあります。
神社跡からは、お山巡りのみちという登山経験豊富な上級者向けコースがあります。奇岩怪石の中を鎖、手摺、吊橋を伝いながら行く険しいコースのようで、機会があればチャレンジしてみたいです。
しっかりとした造りの庚申山荘には約2時間で到着です。山荘の裏山には奇岩怪石が聳えています。
外にはバイオトイレが併設されており、チップ制で綺麗に管理されています。
山荘内部には入らず、入口付近を見学します。中にはオジサンハイカーが一人休憩中でした。
庚申山荘裏手より庚申山頂を目指して登り込んでいきます。
奇岩怪石にアプローチし隙間を通り抜けていきます。
庚申山は滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」の中に登場し、奇岩怪石の絶景が描写されているとのこと。まともに読んだことがないので、機会があれば書店で立ち読みでもしてみます。歴史が好きな方には、庚申山訪問いいんじゃないでしょうか。
やがて穏かな鉄梯子や垂直の梯子、鎖などのアトラクションで高度を稼いでいきます。
奇岩怪石地帯を楽しんでいきます。
鎖のトラバース、岩の登り込みと変化に富んだコースです。
アトラクションで結構な高度を稼ぐと絶景が拡がります。遠方に薄っらと筑波山が確認できます。
下は絶壁、正面には袈裟丸山が見えています。
原生林の中、穏かな道を歩いて行くと庚申山山頂にアタックしていました。山頂には先客ハイカーがおり、後に暫く同じルートを視界に入る位置で歩いていました。
庚申山山頂は狭く、樹林に囲まれて展望も利いていません。しかし、少し下がった場所に素晴らしい展望地があります。
展望地に移動すると突然視界が開けます。目前には、本日のターゲット「皇海山」が一際目立つように聳え立って見えます。
ガツンと「日光白根山」、しらねぇ~とは言わせません。
主峰「男体山」を中心とした日光連山
大変山深い位置に聳え立つ「皇海山」の格好良さに何度も凝視してしまいます。皇海橋ではなく、やはりこのルート取りをして正解でした。深Qはこの位置からの眺望も含めて皇海山の品格を高く評価したに違いない。
これから鋸山までの稜線を辿り、皇海山まで縦走していくのですが、近くに見えているにも拘わらず、非常に遠く感じました。側には石楠花の花が咲いています。先程、庚申山頂で一緒になったハイカーと暫し、皇海山を眺めながら展望の良さを共感していきます。
奥秩父チックな稜線を歩きながら、アップダウンを消化していきます。
樹間の隙間から時より皇海山、日光白根山を視界に入れて一息付きます。
暫く歩くと背丈ぐらいの笹薮地帯に入り、薮漕ぎモードになります。ここはまだ深刻な薮漕ぎとまではいかないソフトモードです。一定間隔で前を歩いていた先程のハイカーはダブルステッキで薮を払いながら進んでいます。
段々ウザくなってくる薮漕ぎが続きますが、尾根に咲くシャクナゲの花で癒されていきます。
視界が開けたポイントから袈裟丸山のビューを望み、そのまま稜線を進んでいきます。
シャクナゲを観賞しながら薬師岳を通過していきます。
薬師岳より先はいよいよ梯子、鎖場が登場するアドレナリン放出ルートへと変化していきます。
「白山」と表示のある場所に到達すると、稜線上で最も視界が開けるスーパービューポイントでした。この地点まで庚申山頂で一緒になったハイカーと同ペースでした。
皇海山、背後に聳える日光白根山
男体山を中心とした日光連山、そしてまだ雪が少し残る上州武尊山
白山で展望を楽しんだ後は、高度感たっぷりの鎖場下降から始まります。その後、地図上では蔵王岳でしょうか。鋭角な峰を登り返していきます。
下降を終えてから、上を見上げて鎖掴みポーズを決め込みます。並走してくるハイカーを背後に捉え、難儀している様子が伺えます。妙義山の鷹返しとまではいきませんが、結構なハイレベルの鎖場です。
カニのヨコバイを通過して、先程の急峻な峰を振り返ります。15mぐらいの直角な下降ポイントでした。久しぶりの鎖場登攀シリーズに冷汗を掻いてしまいました。
続いては鋭角な峰の登り返しに入ります。垂直梯子を攀じ登り、ダブルロープを利用して急上昇していきます。難易度は中の上と感じました。庚申山からほぼ同ペースのハイカーとは、登攀ポイントから一気に差が出始めていきます。
高度を稼いで見降ろすと結構な高度感があります。庚申山から小刻みなアップダウンを繰り返し歩いてきた稜線を振り返ります。絶景です!
やや長めの垂直梯子をゆっくりと下降して見上げていきます。
鎖場登攀を繰り返し、鋸山にアタックを仕掛けにいきます。
六林班峠との分岐を過ぎたすぐ先が鋸山山頂でした。山頂は縦長で狭さを感じます。
展望が良く利いている狭い山頂から飛行機雲を見上げ、通過してきた鎖場登攀地帯を振り返ります。
本日何回目の眺望になるのか、角度はほぼ変化なしの男体山、太郎山、日光白根山・・・等。
武尊山を見つめた後、本日の目的地「皇海山」アタックに向かいます。ここからはピストンになります。
鋸山が鋭角なだけに凄まじい急降下を強いられます。ロープを握り注意を払いながら下降していきます。
急降下した後は笹薮を通過し鞍部の不動沢のコルに到達です。ここは沼田側から入る皇海橋のルートとの合流地点でもあります。皇海山頂上まで所要時間70分の記載あり。
遭難多発地帯であるため、注意看板が妬けに目立ちます。
原生林の中、ピンクテープをしっかり辿りながら倒木を乗越えたり、地味ではありますが新鮮な登り込みを味わいます。
山頂直下より激しい登り込みへとシフトしていきます。
青銅の剣を目に焼き付け、そのまま皇海山アタックを決め込んでいきます。駐車場から約6時間半も掛かる超ロング行程でした。展望の利かない山頂には10名程度のハイカーが昼食を摂っています。
深Q新規百名山登頂更新を1峰延ばし、山頂標識と三角点を撮影していきます。
別の山頂標識も撮影し、おにぎりを展望の利かない樹林に向けて美味しく頂きます。
アプリで山頂の高度計を確認すると5mの差異がありました。下山行程もロングな為、あまりゆっくりはしていられません。山頂を振り返り、次回再来する時があればダートな道を我慢して、皇海橋から登頂してみたいと思います。
ロープを掴みながら下っていきます。途中、庚申山から一緒であったハイカーがつらそうに登り込んできました。その後、下山まで同ルートのはずでしたが、お会いすることはありませんでした。無事に下山されていることを祈ります。
皇海橋から登ってくるハイカーが多いのか、予想以上のハイカーの数と擦れ違います。百名山人気でしょうかね。でも皇海山は、栃木側からダイナミックな皇海山の山容を眺めてから、アタックすることに価値があると感じました。
不動沢のコルに到達すると、茨城よりお越しの小奇麗なレディーハイカーに皇海山頂の様子を尋ねられます。旦那様は鋸山にピストンに向かった様子で、コルで待つか少し先の様子をみるか悩んでおられました。四駆でダートな林道を走行してきたとのことでしたが、普通車でも走行は可能だそうです。楽しい会話をさせて頂き、結構な元気を頂けました。さぁ、ロングな下山も頑張るぞ!
※画像は掲載許可を頂いております。
あの鋭角な鋸山山頂部を見ると登りたくないけど、あそこに戻らなければ帰れません。笹薮を掻きわけながら進んで行きます。
岩場でロープ登攀しながら、皇海山と背後の日光白根山を振り返ります。
鋸山山頂直下の急峻なロープ箇所で下山してくるハイカーと擦れ違います。登り方向のハイカーは上からの落石に注意を払いながら登攀していきます。
ここで擦れ違ったハイカーが、木の根元隙間部分に財布を挟み込んだまま下りて行こうとしたので、財布を置き忘れていないかと問うとやはり本人のでした。財布紛失寸前でかなり焦っていました。
更に上から下りてくるハイカーに道を譲り、静かに2回目の鋸山アタックを決め込みます。山頂はデポしてあるザックがひとつ残っているだけで、貸切状態になりました。
遠方に見える山は会津駒ケ岳あたりでしょうか。そして上州武尊山を再度視界に捉えていきます。
日光連山のビューを眺めて分岐より、六林班峠に向けて下りていきます。
気持ちの良い笹原地帯を下っていきます。(最初だけでした・・・)
本日最後の皇海山を振り返り、薮漕ぎルートに入ります。
これ単純に薮漕ぎって程の生易しいものではなく、一般登山道(破線ではない)としては、背丈はある1級品の距離もロングな薮漕ぎルートが続きます。暑さで半袖だったので、腕の皮膚にかなりの勲章を頂きました。
しかもピンクテープを探すにも苦労して、足元が笹で見えなくそれだけならいいのですが、倒木のトラップが多く隠されていて、何度も躓きその度にスーパーマリオのように飛び跳ねていきます。コースロストも1回発生させて、その時は来た道を素直に戻ることを忠実に守りました。
必死の思いで六林班峠に到達します。滅茶苦茶疲れました。庚申山荘の表示を見て気力を振り絞って向かいます。
六林班峠から庚申山荘までCT2時間、まずは薮漕ぎから入り、山腹トラバースを進んでいきます。沢を高巻きに渡り、登山道崩壊箇所も数箇所あります。
誰にも出くわさず、人の気配を感じません。まるで熊でも出てきそうな雰囲気です。
登山道の狭い箇所も結構存在し、山腹トラバース地獄に耐え抜くことが困難となり、脚に痛みが発生してきました。そこで、普段活用しない必殺!シングルステッキの登場です。自分がピンチになった時だけに使用します。普段使用しない理由は、バランス感覚の維持及び脚力強化の為でもあります。
そのままステッキを活用し、谷側の踏ん張りをかけていた右脚をカバーしていきます。なんと!すてっき~なことに脚が自然と前に出るようになります。やがて、庚申山荘に近づきます。瀕死な状態になりそうなくらいロングに感じ、メンタル面もやられていきます。
最終山腹トラバース地獄も乗り切り、庚申山荘に到達していきます。時刻は既に16時で林道の日没も視野に入れておりましたが、何とか駐車場までは日没に間に合いそうです。山荘内部を伺うと誰もいませんでした。
一の鳥居まで疲弊した状態で戻ります。通過中、周囲には鹿の鳴き声及び姿を多数見かけました。
この4㎞林道歩きも真剣に脚に堪えてきます。まさしく、拷問林道歩きと化していました。
ゲートを通過して駐車場に帰着出来た時、凄い所から帰還できたんだなと勝手に生への喜びが湧いてきます。それだけ自分にとって過酷な山行を体験してきたと感じました。雲取ピストンクラスで発生する脚部玉砕型を凌ぐ、脚部崩壊型の登山であった為、一刻も速やかに温泉で脚部を癒したい!
なんと!車で20秒の場所に庚申温泉「かじか荘」があり、日帰り温泉600円で入場できます。源泉は熱めでしたが、露天が大変気持ち良く1時間ぐらいゆっくりと脚部崩壊を食い止めながら、徹底的に癒していきました。
本日の日帰りで歩いて来たルートをアプリで確認してみます。歩行距離28.5㎞の鎖場・岩場・梯子・ロープ・薮漕ぎ・トラバース地獄などアトラクション満載コースを頑張って歩いてみました。
最後までご覧いただき、大変お疲れ様でした。(*^。^*)
■天候:晴れのち曇り
■出会った人:40人ぐらい(ほとんど不動沢のコル⇔皇海山、下山時:鋸山⇒駐車場まで貸切)
■タイム:4:20~18:00【13時間40分、休憩・コースロスト含】
■形態:単独行
■水分:4.5L(ペットボトル500ml:9本)
■山域:足尾山塊
■深Q百名山:第33座目
■出発地点より駐車場までの片道距離:105Km
■その他:
★非常に山深い位置に聳え立つ「皇海山」は、アプローチの悪さで話題になる百名山の1峰です。ダートな林道で運転で疲弊するか?ダートな林道歩きで脚部で疲弊するか?結果、甚大な脚部疲弊状態を味わい、超拷問ルートとなった山行でした。
★結論から申しますと、クラシックルートの庚申山経由のルートで登れて満足です。なぜなら、皇海橋ルートからだと皇海山の魅力が半減以下となるため、深Q同一ルートで登頂してこそ、百名山の価値が味わえます。皇海山は単に地味な山ではありません、大変素晴らしい魅惑的な百名山の一峰です。と理解できました。
★登頂後、2日間は上半身も筋肉痛となりました。久しぶりの鎖場登攀シリーズは鈍った身体には堪えました。上半身も日頃から鍛えていないと駄目ですね。