八ヶ岳(赤岳) 2011/7/15 日本百名山登頂シリーズ
八ヶ岳(赤岳)2,899M 高低差1,334M
八ヶ岳は長野県と山梨県にまたがり、南北に約20K、東西に約15Kの規模を持つ山脈です。峻険な峰々が連なる南八ヶ岳に最高峰の”赤岳”が聳え立っています。
今回八ヶ岳入門編からとはいかず、いきなり大将の首を取りにいく作戦を練ります。前日まで瑞牆山を攻めるプランを検討しておりましたが、急遽過去山行の総合テストを実施したくなり、八ヶ岳の赤岳登頂に意欲が湧きます。岩場・鎖場・鉄梯子・縦走・長距離・急登・ガレ場・急峻・大展望などテストには最高の材料が揃っています。自分を試すいい機会なので気合いを入れて挑んでいきます。
更に折角ならばということで、たかね荘を起点に登りは難易度ランキング1位の”真教寺尾根登山ルート”を利用して、下山に難易度ランキング3位の”県界尾根登山ルート”で攻略していくことにしました。
(ルート);たかね荘(美し森ファーム)標高1,565m⇒羽衣の池(標高1,610m)⇒サンメドウズ清里スキー場リフト降り場(標高1,900m)⇒牛首山(標高2,280m)⇒扇山(標高2,357m)⇒竜頭峰⇒赤岳(標高2,899m)⇒大天狗⇒小天狗⇒たかね荘
自宅を21時出発⇒上信越自動車道富岡IC下車⇒一般道で野辺山駅に0時到着します。そして駅ロータリーの駐車場で車中泊します。駅併設のトイレは真っ暗でしたが、センサーで明かりが点きました。
AM5時目覚めます。ロータリー駐車場は私の車だけです。野辺山駅の完全貸切車中泊でした。
標高1,345米東日本鉄道最高駅の石標が立ちます。裏手には野辺山高原ホテルがあります。
真教寺尾根ルート登山口に向かう途中、本日登頂を目指す”赤岳”が聳え立つのを視界に捉えます。
美しの森ファームたかね荘の無料駐車場に到着します。
駐車場には、店主の御厚意により自由に使って下さいとの案内版があります。駐車場から牛首山、赤岳と魔の真教寺尾根ルートの全体像を捉えることができます。
美し森ファーム前より登山口に入ります。今まで実践で習得してきた我流登山のスキルを全て赤岳登頂にぶち込むつもりで5時30分登山開始です!
羽衣池方面に向かい木の階段を登っていきます。
笹の葉地帯の間を通る木の階段は長く連続して、一気に汗が吹き出します。ウォーミングアップという生易しい程度のものではありません。
羽衣の池に到着します。まだ遠くに赤岳が見えます。
牛首山・赤岳方面に向かいます。
ササ藪地帯に入ると段々深くなり、けもの道のようになっていきます。
ササ藪は夜露で濡れているので足元はおかげの有様です。
編笠山・権現岳方面の視界が開けてきました。途中息を切らして小休止しているとベテランハイカーが安定した登りで先を抜いていきました。スキー場リフト外側のワイヤーは夜間から朝方にかけて通電されています。
リフト上側の展望台からは富士山の頭が見えていました。
金峰山・国師ヶ岳方面、五丈岩がはっきりとわかりました。
スキー場から賽の河原まではアッと言う間です。
真教寺尾根ルートの牛首山・赤岳方面、赤岳山頂にある山小屋が確認できるようになってきました。
そして牛首山に向かいます。またウザいササ藪地帯に入ります。
徐々に高度を稼いで一旦、開けた場所に出ます。
富士山と南アルプスを確認
その先は甲武信の急坂を上回るくらいの強烈な登り込みを強いられます。呼吸を乱さないようにゆっくり歩を進めますが、かなり厳しい登山です。瑞牆山にしておけば良かったと後悔しながら登り込みます。
必死の思いで”牛首山”に到達します。三等三角点がありました。
見晴らしの利かない山頂で1本立てます。高低差700Mぐらいは稼いできました。汗の噴き出す量も半端ではありません。ザックには4L近くの水分を担いできましたが、返ってザックの重量で相当なスタミナを奪われることになりました。
先を進んでいくと”扇山”に到達しました。
樹林帯をコルまで下り、折角稼いできた高度を失います。樹木の隙間から赤岳山頂が伺えます。
主峰赤岳に向かうまでフラットな道を歩きます。いくらか気持ちをリラックスさせることができます。
しかし、すぐに甲武信クラスを上回る最大級の急登が始まります。非常に足腰に堪えますので踏ん張りがどこまで効くか体力勝負です。
登り込んでいる途中、息が上がり大きく酸素を吸い込みながら上昇していると、喉に違和感を感じます。何か異物を吸い込んでしまったようで一気に吐き出し作戦実行です。
喉元から痰を吐きだすようにゴォオオオオオオオオオオッ!っと。ケンシロウが経絡秘孔を突いたかのように腹の底から内部爆発を引き起こし完全に吐き切ります。どうやら蝿を吸い込んでいたようです。
赤岳山頂部が徐々に近づいて見えてきました。赤岳頂上小屋もはっきりと視界に捉えることができます。
権現岳・編笠山を真横に通り越し、振り返ると牛首山、遠くには富士山の頭が展望できる位置まで到達します。牛首山後方から徐々に雲の発生量が増えていました。
金峰山・国師ヶ岳を再度確認、そして富士山のアップ
岩場地帯の登りに入り、牛首山・富士山方面を展望しながら小休止をとります。この辺りから大腿四等筋膝上部分が徐々に攣りはじめていました。
立ち枯れ地帯を抜けて再度小休止しながら痙攣気味の脚部を揉み解します。牛首山にガスが掛かり、こちらに攻めてきそうな勢いです。
再び岩場地帯に入り、初めての鎖が登場します。鎖は不要な箇所ですが、お約束で掴みます。
南アルプス方面、手前の編笠山辺りにもガスが掛かり始めてきました。ガスに巻き込まれないように先を急ぎます。
難所の鎖場が立ちはだかり、ガッシリと鎖を掴みます。妙義山の鎖場よりは安全かと思われます。
更に上部の鎖場をガシィガシィ!と登攀していきます。
またその先には手強い鎖場
そして岩場登攀では、ホールドとスタンスを確保
結構な高さがありました。登り終えて見下ろします。ガスがどんどん迫ってきています。
頂上に到達するまでは待って欲しかった。怪我をしても仕方ないので、焦る気持ちを打ち殺しゆっくり登攀していくことにしました。
ガッシリ掴んでゆっくり目のガシィガシィ登攀をしていきます。鎖の長さは30Mぐらいありましたね。
険しい登りは続きます。トラバース箇所の錆びた鎖場もありました。
鎖・・・鎖・・・クサリ!!!容赦なく鎖場が待ち構えています。
急登箇所の岩場が見えてきました。ここで30歳前後の男性シングルハイカーと擦れ違い、山頂の情報とこちらは登り口の情報を交換します。
その男性は、山小屋泊であとは真教寺尾根を下るだけだそうです。真教寺尾根ルートの下りは、更に慎重さが要求されるほど危険な箇所が連続します。山頂までまだ20分ほど掛かるらしいです。ガスが発生しているので急いだ方がいいとアドバイスされます。
まだ鎖場があります。中々登頂させてくれません。
かなり体力的には消耗仕切っている状態で鎖場登攀をこなしていきます。真教寺尾根分岐に出ました。
阿弥陀岳・中岳が目の前に現れ、その先には北アルプスが眺望できます。
竜頭峰を近くに見ながら鉄梯子をガシガシ登ります。
その先の岩場を登っていくと赤岳山頂が見えてきました。ここまで非常に長くつらい厳しい行程でした。
阿弥陀岳が力強く聳え立っており、一際目立つ存在感を漂わせております。
赤岳から阿弥陀岳に向かう人が小さく見えます。私は、竜頭峰を巻いて赤岳を目指します。
竜頭峰分岐から頂上を目指していくと年輩のベテランハイカーたちと道を譲り合いながら擦れ違います。
攣りそうな脚を引きずりながら鉄梯子を登っていくと遂に山頂です。
赤岳頂上小屋だ。
山頂は3名の自衛隊員に占拠されていました。内1名は、まるで検問体制を取っているかのようにこちらの様子を伺っています。
一等三角点を確認、そして三角点タッチ
自衛隊員に遠慮して、10時15分登頂成功です。山頂には赤嶽神社があります。
口元は2,900M超えなので酸素濃度が希薄化した状態で少し息苦しさを感じます。少し頭が重く感じ私は高山病にかかり易い体質なのかもしれません。今回も単独無酸素登頂でした。
改めて山頂から阿弥陀岳・中岳、市街地方面を眺望します。
赤岳頂上小屋のあるピークにも行ってみます。
赤岳頂上小屋前のピークにて、行動食のゼリーを補給して小休止します。
こちらには向かいませんが、ガスに巻かれ始めた赤岳天望荘が見えました。
最初のピークを振り返り、県界尾根コースへと下山する準備をします。
頂上小屋玄関口の前に県界尾根に下るルートの表示があります。
進む先はガスが立ち込めてきています。
ガレに注意しながら下ります。
赤岳天望荘側はガスが消え始め、県界尾根側は下からガスが巻き上げてきます。
県界尾根ルートにも厳しい鎖場がありました。下りなので慎重に鎖を握ります。
鉄梯子に鎖が併設してあります。鉄梯子は長く、下の方はハング状になっていました。
鎖に掴まってスルスル下ります。真横を見ると急峻な峰を下っているのが判ります。
ガスの深い方向にスルスル・・・下ります。
鉄梯子を下りて、その先から鎖場地帯を抜けます。そして樹林帯に入っていきます。
大天狗に到達、特に何もないのでスルーして先を急ぎます。
樹林帯、ササ藪と通過していきますが、終始蝿が纏わりついてきます。汗臭くなっている自分目掛けて蝿が襲来しているのか?この空間全てに蝿が存在するのか?よくわからないくらい蝿が大量発生しています。
また口の中に入らないように、お口は固くチャックします。
真教寺尾根方向が見える開けた場所に出ました。ここで小休止です。
小休止後、小天狗を通過し分岐点より清里方向に下ります。
とにかく長い距離を下ります。時より真教寺尾根をチラチラ見ながら下ります。
やっと県界尾根コースの登山道入口に出られました。しかし、駐車場まではまだスキー場を経由して歩かなければなりません。終わりが見えない・・・。
舗装された道を歩き、ササ藪地帯にも入ります。歩いている途中、なぜか足元にチクチク切れた痛みが走ります。
原因はこのトゲトゲしい草でした。まるでカッターみたいな刃物で脚をピシャピシャ切られているような痛みでした。気を付けながら歩きます。
その先でロータリーに出てから車道歩きになります。
サンメドウズスキー場入口前を通過して、たかね荘無料駐車場に14時10分帰着します。ほとんど車がありません。山小屋泊の人が多かったようです。
26K先にある長野県小海町に向かいます。小海町には小海リエックスという穴場のスキー場があり、20代前半の頃、ダチの別宅があった佐久市を起点にこの周辺にはよく通っていました。当時見えていたはずの八ヶ岳については、全く関心が無かったので気にもかけていませんでした。
超疲弊した身体を一刻も早く完全体に戻すため”八峰の湯 ”(やっほーのゆ)に立ち寄ります。
自分で設定した登山総合テストは登頂成功により合格としました。栄誉を称えるため身体を癒します。食堂からは北八ヶ岳が眺望できました。
■天候:晴れ時々曇り
■出会った人:25人ぐらい(真教寺尾根3人、県界尾根3人、山頂付近残人数)
■タイム:5:30~14:10
■その他:
◇日本百名山第11座目と着実に記録をコツコツと更新して参りました。あと89座生涯かかっても難しいだらうね。北海道及び九州の地区は旅費だけでコストが掛かり過ぎるので、まず将来的にも訪問不可能です。次は是非、瑞牆山訪問に伺いたいです。
◇ウォーキング50K大会参加の練習として、雲取山三峰ルートから始まった駆け出し低山ハイカーでしたが、8ヶ月挑んできた集大成を八ヶ岳(赤岳)を総合テストと位置付けチャレンジしてみました。
真教寺尾根の登り込みは半端なくきつく、仕上げに多数の岩場・鎖場登攀をこなして登頂する非常に密度の濃い山行となりました。実際、登頂後山頂では大腿四等筋が攣り、必死に揉み解しました。ダメなら赤岳頂上小屋でお世話になるつもりでした。結果、ゼリー注入効果発現で回復します。その後の県界尾根も下りの鎖場が危険なので集中力を高めて慎重に下りました。まさに超本格的拷問登山となりました。
◇翌日は温泉効果にも勝てず、全身に痛みが走ります。数日間は脚部に違和感が残りました。テスト合格後の身体へのダメージは甚大でした。
■参考:八ヶ岳登山ルートガイド